御教え集11号 ③武芸の本当の名人は腹の力を抜く
今度私がやるのは、ちょっど夜明けの時期になったから、時機もピッタリするわけですね。そんなわけで、いまの宮本武蔵の偉さというものは、なんでもそういったような、名人というものは、そういうものだということです。そうして武芸の本当の名人になると腹の力を抜くんです。よく人間は腹に力を入れろというが、あれは本当じゃない。間違っている。だから、力を入れるとか、頑張る・・・そういうことがいけないんです。だから決して頑張ってはいけない。頑張ると力が限度になるからね。頑張らないのが非常に力が出るんです。ちょうど浄霊で、力を抜くほど効果があるというのは、それなんです。だからいろんなことを人が言ったときに、どこまでも自分の主張を通すという、あれがいけないんです。愚かになるんですね。私が素直にしろ、素直にしろと言っているのは、素直にするのは勝つんです。最後には勝つんです。従わせるほうが下になっちゃう。よく負けるが勝ちと言いますがね。議論しますね。こっちのほうで負けますね。そうすると勝ったんです。なぜなら議論したほうは、主張を言っちゃったんですから、あとはなにもない。素直に負けたほうは、どんなものを持っているか分からない。だから勝った人は恐いんです。負けた人はなんでもないんです。ひどい目に合された人は、一時は恐い思いが、時間が経つに従って決して・・・不安はなくなるんですね。むしろ先方は満足しているだろうと思うから、こっちのほうが気が明るい。ひどい目に合せたほうは、あいつは怨んでいるだろう。仇討ちをしないだろうかと、気が苦しいんですね。だから負けたほうが勝っているんです。だからなんでも負けて先方の言い条を通させるんです。これは腹の力を抜くのと同じです。だから私はどんな部下の、つまらないことを言っても、できるだけ言うことを聞いているんです。
【御講話篇7 P348】
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